オンライン相続登記 | 司法書士なしでもやれた体験記 | その3 | 申請から承認まで
2018/03/26
オンライン登記の環境を準備して、さていよいよ
個人での相続登記の申請を独力で行います。
はじめに
オンライン相続登記の実際の体験談です。
司法書士に頼らずに独力でやりました。
オンライン登記用のソフトを使って、
操作説明書をよく読んで頑張れば処理は
できる筈なのですが、普通の人にはなかなか
わかりにくい部分があります。
申請の内容、書類の添付の考え方を中心に
体験してわかりにくかった部分を解説します。
法務局が用意しているマニュアルを参考に
進めることができる部分は省略します。
なお、今回の登記の体験は不動産(土地、建物)の
相続登記で、遺産分割協議書がある場合に該当します。
法定相続、すなわち遺産分割協議書がない場合は、
書類が少なくなり処理は少し簡単になります。
オンライン相続登記の手順(全体の流れ)
個人のパソコンで準備されているという前提で、
登記の処理の大きな流れは以下のようになります。
(PCの環境整備に関する記事はこちら)
手順1:申請用総合ソフトによる申請書の作成
手順2:添付資料の準備、スキャン、添付、電子署名
手順3:戸籍謄本、遺産分割協議書など書類原本の法務局への送付(または持参)
手順4:法務局の審査、(更生措置)、承認
これを見るとわかるように、オンライン登記は、
申請書の作成、資料の添付、電子署名、並びに
審査/承認など多くの過程はオンラインで処理
されるのですが、戸籍謄本など紙の書類の送付
または持参という部分(手順3)は、残ります。
オンライン登記には、このような紙の書類送付が
ないと思っていたのですが、現実は少し違いました。
この辺りの感覚の違いは、おそらく法務局の人には
当たり前かもしれませんが、我々一般人には
ピンとこない部分でした。
また、今まで知らなかった法定相続情報一覧図
という書類もあると便利なことがわかりました。
この記事では手順1と手順2を中心に説明します。
オンライン登記申請(相続による不動産登記の場合)
申請用総合ソフトを使って申請、登記を行います。
従来は紙で登記申請書を作成したのですが、
ソフトを用いて申請が可能となります。
ソフトの基本的な使い方は法務省のページに詳しく
解説されていますので、まず一読をお勧めします。
上記ページの操作手引書のダウンロードで
『相続(遺産分割協議)による所有権移転の登記申請』
をダウンロードして、まず一読してください。
なお、処理の内容によっては、利用時間の制限があります。
オンラインで申請処理する際に、申請データの送信、
処理状況の更新、などは利用時間内でないと
操作できないことになっています。
それ以外の操作はいつでも利用可能です。
送信、更新などを伴う処理の利用時間は、
月〜金曜日までの午前8時30分から21時まで。
ただし国民の祝日・休日,12月29日から1月3日までを除く。
申請情報の入力開始
申請用総合ソフトを立ち上げると、申請者のIDを
入れるように求められます。
初めて使用する時に、「申請者IDをお持ちでない場合」
をクリックして申請者登録を行います。
ID申請と取得にはメールアドレスが必要です。
IDを取得してログインすると、以下のような
ガイド画面が出てくるので、「申請書の作成を行う」
をクリックして、必要な申請情報の入力を進めます。
最初は、これを使って申請内容を入力しますが、
そのあとはこの画面を表示させなくても、
手順を進めることは可能です。
作成する申請様式を選ぶ画面が表示されるので、
以下のように、登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権の移転(相続)[署名要]
を選びます。
そのあとは、申請書入力画面が表示されるので、
マニュアルやヘルプを参考に必要な項目の
入力を進めていきます。
いくつか気をつける点を書いておきます。
件名、氏名
登記申請の画面
件名は、自分でわかるように自由につけて構いません。
氏名は、カタカナで、自分の銀行口座のアカウント名と
同じにしておくと、便利です。
登録免許税の支払うをオンライン決済する際に
振込人の口座名と一致するからです。
「登記の目的」は、所有権移転で、そのままです。
「原因」の相続日は、被相続人の死亡の日になります。
なお、司法書士を頼まないので、登記申請を行う人が
相続人本人となります。
相続人でない人が申請するのは、司法書士や、
ある条件の親族などが代理人となることができます。
代理人が登記申請する場合は、委任状が必要となり
電子署名も代理人と相続人の双方が行うなど、
処理が複雑になるので、個人で登記するときは、
相続人本人が申請を行う形がシンプルで簡単です。
筆者の場合は、妻が相続人であるため、
妻の名前で全て処理しました。
妻がよくわからないパソコンの操作は
筆者が横に座って教える形で実施しました。
もっとも、実際に誰がパソコンを操作したのかは
問題にはなりません。
相続人情報の入力
次に相続人のセクションを入力します。
被相続人は亡くなった方の氏名を記入します。
住所氏名は、相続人の住所氏名を記入します。
不動産を複数の相続人により所有し登記する
場合は、相続人を追加します。
今回は、単独でしたので、これに関しては
経験していません。
登記識別情報通知希望の有無について
申請用総合ソフトのデフォルト画面では
「登記所での交付を希望する」となっています。
その欄をクリックするといくつか選択肢が出ます。
その他の選択肢は、
「送付の方法による交付を希望する」
「オンラインによる通知を希望する」
「希望しない」
があります。
登記が終了して後から、登記情報を探すときに、
登記識別情報があれば便利です。
ただ、無くても名前や住所などで登記情報を
検索して取得することはできます。
交付方法を選ぶとすれば、一番簡単なのが、
「送付の方法による交付を希望する」
でしょう。
どのみち郵送か持参にて、戸籍謄本など原本を
提出するので、それらの書類の原本返却を
お願いするときに登記識別情報などを同封して
もらうようにお願いできます。
(法務局はお願いすれば親切にやってくれます)
「オンラインによる通知を希望する」を選ぶ場合は、
「登識取得用届出様式の作成」
をクリックして、必要な情報とパスワードを入れて
様式を作成します。(以下の図を参照)
この取得様式は自動的に申請書に添付されます。
これにより、登記が承認された後で暗号化された
電子公文書である登記識別情報が配送されますので
それを開くことができます。
添付情報とは何を用意すれば良いのか
相続人の下のセクションが添付情報です。
この部分が、今回のオンライン相続登記で
最も悩んだところになりますので詳しく書きます。
この添付情報とは、法務局が申請内容を確認して
審査するために必要な情報を意味します。
実際には2種類の情報があります。
すなわち、オンライン申請段階でスキャンして
電子的に添付するものと、書面による原本を準備し
別途郵送または持参して提出するものと、
2種類あることになります。
『相続(遺産分割協議)による所有権移転の登記申請』
をダウンロードして、最初の3ページまでを一読すると
手順の説明があります。
(1)郵送または持参する添付書類
法務局が、相続が発生したこと、及び
相続人を特定するため、登記原因証明情報と
呼ばれる書類の原本を不動産を管轄する
法務局へ送付または持参する必要があります。
オンライン申請では、添付情報の欄に、
登記原因証明情報(持参)または(送付)
と記入して申請してください。
実際の原本の書類は法務局に持参するか簡易書留で
送付することになりますが、
オンラインによる申請の受付日から2日以内に
(初日と休日を除いて算定します)
登記を管轄する法務局に到着する必要があります。
2日以内というと、遠隔の法務局の場合は、郵便事情が
気になりますが、それほど厳格ではないと考えてください。
筆者の場合は、登記の管轄は北海道の法務局であり
通常2日かかるので、オンライン申請を夜に行い
(受付は翌日になるので)
翌日の朝にすぐに簡易書留で速達にして送付しました。
また、不足する資料が指摘されたのですが、
遠隔地のためすぐに取得でいないという事情を
担当の方に伝えると、少し待ってくれました。
あまり長くは待てないということでしたが、
それなりの理由があれば、数日程度であれば
待ってくれるようでした。
登記原因証明情報とは何か
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本,
相続人の現在の戸籍謄本、遺産分割協議書、
相続人の印鑑証明書、法定相続人全員の
住民票の写し、相続する不動産の固定資産評価証明書
(一番新しい年度のもの)などです。
なお、戸籍謄本、除籍謄本などの書類は、相続関係説明図
を提出することで、原本を返却してもらえます。
相続関係説明図に関しては、上で説明した手引書の
2〜3ページに情報があります。
詳しくは、法務局ホームページに掲載されている
の4ページを参考にしてください。
さらに、次の項で説明するように、2017年から
法定相続情報一覧図を自宅の最寄の法務局で
取得できるので、その書類を替わりに利用する
ことも可能で、これがお薦めです。
(2)スキャンしてオンライン申請に添付する書類
登記原因証明情報として,相続関係説明図(書面)を
スキャナで読み取った情報(PDF形式、電子署名は不要)
を申請情報と共に送信するほか,その書面の原本を
管轄登記所に持参するか,書留郵便等により2日以内に
送付する必要があります。
法定相続情報一覧図を利用することも可能
相続関係説明図の替わりに、法定相続情報一覧図を
作成することをお薦めします。
これは法務局で教えてもらったことです。
自分の住んでいる場所の管轄の法務局で、無料で
法定相続情報一覧図を作成でき、作成した一覧図と
遺産分割協議書を、両方スキャンして、添付して
オンライン登記申請を行うことができます。
スキャンした添付ファイルを個別に
電子署名する必要はありません。
法定相続情報一覧図は、その他の様々な相続手続きにも、
使うことができ、複数枚を無料で作成できるので、
取得しておくのがオススメです。
これを使うと、相続手続きで戸除籍謄本等の束を
何度も出し直す必要がなくなり、とても便利です。
法定相続情報一覧図の作成手続きは、こちら。
なお、相続人の住民票は、住民票コード情報を
入力することで、不要となります。
その他のオンライン申請入力
登記所の選択
相続登記する不動産の登記の地番から、管轄の
登記所を調べ、選択します。
課税価格の入力
直近の不動産の固定資産評価証明書から、
価格を入力します。
評価証明が来ていない場合は、
市町村に評価額を問い合わせことになります。
1,000円未満の端数は切り捨て、評価が1,000円未満
である場合は,1,000円になります。
登録免許税の計算
相続による移転の場合は税率が1000分の4であり、
課税標準額にこの税率を乗じて計算した額です。
計算した額に100円未満の端数は切り捨て,
計算した額が1,000円未満であるときは1,000円。
不動産の入力
不動産の入力は、オンライン物件検索を用いて
物件情報を取り込むことができます。
被相続人の名義になっている不動産を
検索し情報を取り込むので、正確です。
ただし平日の8時30分から21時まで。
残りの手順
申請情報を入力したら、申請書作成画面でチェックを入れます。
ソフトが内容をチェックして、形式的におかしな部分を
エラーとして指摘します。
何もない場合はエラーはありませんと表示されるので、
完了します。
その後は、処理状況表示画面に遷移するので、
ファイル添付、署名付与、申請データ送信など
下の図の画面の手順で進めます。
操作手引書がわかりやすく説明しているので
それほど苦労なく処理を進めることが可能です。
登録免許税の支払いも、このオンライン登記の
システムはオンラインで銀行から支払いできるので
スムースに処理を進めることができます。
納付というボタンがあります。
申請データ送信後の補正の例
申請した後、法務局から補正のお知らせ
というものが通知されることがあります。
添付書類で足りないものがあるときなどに、
連絡がきます。
筆者は、オンライン登記で、2件の登記を行ったのですが、
1件目では、登録免許税の金額が間違っていて、
多く払いすぎたために、還付するという件でした。
2件目では、不動産の取得時期が古いため
被相続人の住所が、戸籍上の住所と異なる
という事態があり、戸籍の附表というものを
市役所で追加で発行してもらいました。
いずれも、法務局の対応は親切で、スムースに
補正をして登記を完了することができました。
まとめ
司法書士に頼まないでの相続登記を
なんとか自分でやりました。
申請用のソフトはなんとか使えても、
添付書類の作り方や、添付の仕方は
最初はとてもわかりにくいものでした。
でも、法務局で不明な点を確認することで、
普通の人でも問題なく手続きができそうな
ことがわかりました。
ぜひチャレンジしてみてください。
戸籍謄本など公的書類の準備を除けば、
相続登記の申請を開始してからができている場合、
どのくらいの時間で登記の完了ができるか?
筆者の場合は、戸籍謄本などは既に取得済みで、
法定相続情報一覧図作成で1週間ほどかかり、
郵送で書類を提出し、一部書類の再提出もあり、
それでも2件の登記を2箇所の法務局で完了する
までの時間は、正味で2ヶ月程度でした。
初心者にしては上出来かと思います。
ところで、不動産相続より株券の相続が大変そうです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
元気シニア
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